進行非小細胞肺癌における生存期間は、殺細胞性抗がん剤治療を実施できて中央値1年であったが、癌細胞にドライバー遺伝子変異が見つかり分子標的薬治療ができると、2年-3年と予後延長した。さらに、免疫チェックポイント阻害剤が登場し5年生存も可能な時代となった。また本年4月から保険適応で遺伝子パネル検査が可能となり、多数の遺伝子変化を同時に網羅的に精査可能となり、がんの遺伝子情報は詳細に把握でき、創薬がそれを急ピッチで追いかけている。
治療法が急速に進歩し、長期生存可能となっており、患者は治療して良くなりたいとの希望が強いが、薬物治療の副作用とうまく付き合い続ける必要があり、また本人及び家族の経済的、肉体的精神的負担も長期戦である。完治が理想であるが、進行病態では、ほとんどの患者は闘病の末、癌死する。高齢患者、独居も増えており、治療が本人や家族にとって望ましい最善の結果に結びついているか、経験症例を提示して検討してみたい。