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52 |
平成22年6月17日 |
「児童虐待への取組み」 |
森 修也先生 |
児童虐待への取組み
比治山大学短期大学部
森 修也
我が国における児童虐待への取組みは、1990年(平成2年)大阪府で設立された「児童虐待防止協会」など民間団体や児童相談所を中心とした活動によりスタートした。その後、2000年(平成12年)11月には「児童虐待の防止等に関する法律」(以下「虐待防止法」という)が施行され、本格的な取組みが始まった。
「虐待防止法」は虐待防止を国及び地方公共団体の責務とし、虐待の定義や早期発見や通告の義務などを定め、虐待防止の取組みの根拠となった。平成12年度には17,725件であった児童相談所への児童虐待相談・通告件数は年々増加し続け、平成20年度には42,664件となっている。この増加はあたかも児童虐待の発生件数が増加しているかのように見える。
しかしながら、広島市児童相談所における相談・通告事例の検討結果や国の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」(第5次報告・平成21年7月)を見ると、死亡事例や虐待と判断された件数に大きな変動はなく、発生件数が増加しているという明確な根拠はない。それよりも一般市民や関係機関の意識の高まりにより、より多くの虐待事例(疑い)が発見されるようになったと考えられる。
ただし、毎年少なくとも60人前後の子どもが虐待により死亡しているという現状は非常に重大な問題である。この死亡事例の検証結果を見ると、保護者の不安定な精神状態、性格的な問題や疾病、家庭の社会的孤立、経済的問題など複合的な問題を抱えている、支援を要する家庭状況で発生しており、児童虐待は保護者の精神病理や家族病理の問題として捉えることができる。
この児童虐待という困難な課題を解決していくためには、子どもに関わる機関だけではなく、保護者や家庭の抱えている問題に対処すべく、すべての関係機関や職員が児童虐待という問題に、より強い関心を持ち、予防、早期発見・早期対応、保護・支援、児童の自立支援といった各段階に応じて、真に連携した取組みを行なう必要がある。
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