教育・研究・診療という大学病院での生活から、いきなり町医者へと転身した私は、毎日患者さんと向き合う生活の中で、大学時代に蓄積した知識と人脈を患者さんへの支援に役立てることを考えた。日々の診療に活用する以外にも、がんの患者さんと一緒に会を作り、インターネットでの相談窓口も作った。患者さんに寄り添うということは私の医療の原点であり、大学病院時代にボランティアとして参加した北アルプスの山小屋の診療所での活動や、不登校児たちとお寺で共同生活をしている僧侶が企画した無人島でのサバイバル訓練の医療班としての活動などの経験が役立つこととなった。医療・介護の制度の谷間を埋めるボランティア活動は、当事者の心のケアが中心となり、当事者とのコミュニケーションのとりかたと、常に当事者の立場でものごとを考えて共に行動することが大切である。私たちの会では、傾聴ボランティアの養成と活動を続けているが、ボランティアを単なる奉仕活動や無償労働と考えている受け入れ側もあり、まだまだ社会的に認められたものとは言いがたく、ボランティア活動の継続と啓蒙活動の必要性を強く感じている。