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第77回例会


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77 平成27年2月19日 がん患者の心~がんよろず相談の現場から 児玉 哲郎 先生


がん患者の心 ~がんよろず相談の現場から~

栃木県立がんセンター 名誉所長
 児玉 哲郎


 がんの罹患者は年間80万人を超え、二人に一人は生涯で一度はがんにかかるとされている。がん患者の5年生存率は60%に近づき、もはやがんは治らない疾患ではないが、進行がん、難治がん、再発がんで苦しむ人は少なくない。がん対策基本法の成立により、がん患者、家族が抱える悩みの解消に向けて様々な仕組みが用意されて来たが、隙間を埋める努力も必要とされている。
 がん相談では、広島県には様々なかたちがあり、医師が対応するセカンドオピニオン外来やかかりつけ医が対応する「がんよろず相談医」制度、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターでは、主として看護師、MSWが各種相談に対応するとともに、病院内外でのがん患者・がん経験者も対応するがんサロン/患者サロンや電話で対応する「がん患者フレンドコール」が設置され、さらにピア・サポーターの養成も始まっている。
 県立広島病院では、これらに加えて“がんに関して何でも、気軽に、主治医に遠慮せずに相談して、少しでも疑問、不安を解決していただく”ことを目的に、がん専門医による『がんよろず相談所』を開設した。紹介状を必要とせず、主として医師の立場からがんの診断、治療を中心とした質問に対応している。予約制で一枠60分の時間をとり、ゆったりとくつろいだ雰囲気で対応することで、平成26年7月15日~平成27年2月17日までに、相談件数205件を数えている。
 医師に是非聞きたい、確認したいとのことで、相談内容はほとんどが診療(がんの検査、治療)に関してであり、手術、放射線治療、化学療法に加えて、免疫療法、補完代替療法(サプリメント)まで、広範囲に亘っている。電話予約の際に事前に質問事項を確認し、対応時には参考資料も用意している。また主治医より手渡された検査・画像データ、病理報告書、手術説明書、化学療法説明書などを持参の場合は、記載内容について確認、解説もしている。
 がん相談を受けた方々からは、「病気についてもっと詳しい説明を」「新しい検査手技は、治療法はないのか?」「今までの治療経過は妥当か?」など意見を求めるものから、「主治医への不満、トラブルがある」「時間を気にせず、話をゆっくり聞いていただけて良かった」「1,2年長く生きても苦痛で生きるよりは,後悔のない人生で終わりたい」など主治医に聞きづらい環境があること、「がんサロンは利用しているが専門的アドバイスまで届きません」「定期的に相談に乗っていただければありがたい」など、相談担当医師への継続的サポートを希望するものまで様々であった。現在の医療制度では、主治医の負担が過重でゆとりある診療がむつかしく患者の望む十分な説明が行えない現状もあり、経験と時間にゆとりのある医師の活動の場は少なくないと感じている。




県立広島病院 がん専門医よろず相談所:
http://www.hph.pref.hiroshima.jp/cancer/pdf/gan_soudan.pdf

県立広島病院 がん相談支援センターのご紹介:
http://www.hph.pref.hiroshima.jp/sec/shinryo_center/kanjya/pdf/gansoudan.pdf




 

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