がん医療最近の話題~がん相談事例より
県立広島病院がん専門医よろず相談所相談担当
栃木県立がんセンター 名誉所長
児玉 哲郎
2016年にはがん罹患者数は100万人を超えると推計され、2人に1人は一生に1回がんを経験する時代となった。死亡数も年37万人を超えるが、早期発見、治療法の進歩で5年生存率は62%に達し、もはやがんは不治の病ではない。
一方、進行がん、難治がん、再発がんで苦しむ人も少なくなく、 がんとの共生が大きな課題となっている。 最近のがん治療の進歩は目覚ましく、がん相談の現場でも相談者から最新治療について質問を受けることが少なくない。
県立広島病院で『がん専門医よろず相談所』を開設して2年9ヶ月、本年3月末までに相談件数は521件を数える。相談のため2回以上来所者が52名で、相談者は434名となった。相談者は、患者本人が76%、配偶者が10%を占める。相談者の住所は、広島市内が66%、市外県内が30%、県外が4%であった。患者は男女ほぼ同数で、患者の年齢は60才代が最も多く、次いで70才代、50才代の順で、50才以上で90%以上を占める。疾患別には肺がんが最も多く、乳がん、大腸がん、前立腺がん、胃がんの順であった。相談時の患者の状態は、再発がん治療時26%が最も多く治療後経過観察中20%、進行がん治療中16%、術後補助療法中、治療直前、初回治療中がいずれも9%となっている。
相談内容を見ると、 非がん・前がん病変を含め病気について詳しい説明を求めるものをはじめ、検査所見では、腫瘍マーカー値の評価や持参の画像・病理レポートの説明を求めるもの、転移の有無の判定、CT検査の間隔の妥当性、新しい検査手技はないのか、なぜ早期に発見ができなかったのか、経過観察はどこまで行うのか、5年生存率の意味することは何か、などであった。
がん治療については、今までの治療経過は妥当か、再発後の治療法は?などがあり、さらに持参資料をもとに手術内容の説明を求めるもの、手術が必要か(膀胱がんTUR-BT後再発、浸潤性膀胱がん)、再発病変(大腸がん肺・肝転移)に切除はできないのか、 などがあった。放射線治療では、サイバーナイフ、陽子線治療、重粒子線治療とは何か、その適応は?再照射はできないか?などであり、化学療法については、 進行がん・術後再発例での化学療法で治癒可能か、をはじめ、抗がん剤の有効性、副作用は?副作用が辛く、治療を止めたいがどうか、新薬の使用の可否は?分子標的治療薬の適用は?その開発状況は?治験への参加は可能か?化学療法はもうできないのか?緩和ケアしかないのか?免疫療法の有効性は?免疫チェックポイント阻害薬の使用の可否は?代替療法(サプリメントなど)は有効か?希少がん(肉腫など)の治療は?さらに、無治療経過観察で良いのか?などがみられた。
以上のごとく、 様々な相談を受けているが、 ことにがん医療、 がん対策の最近の話題について、具体例を挙げて述べた。
県立広島病院 がん専門医よろず相談所:
http://www.hph.pref.hiroshima.jp/cancer/cancer-gansoudan02.html
県立広島病院 がん相談支援センター :
http://www.hph.pref.hiroshima.jp/cancer/cancer-gansoudan.html